患者が、過去に経験した感情を、治療のなかで無意識のうちに治療者(あるいは薬剤)に向けることを「転移」という。転移する感情は、患者の心理的葛藤の根源であることが多く、精神分析療法では転移の形成が治療の進展につながると考えられている。転移には患者が治療者に好意的な感情(行為、信頼、愛情)を向ける「陽性転移」と、否定的な感情(憎悪、非難、攻撃)を向ける「陰性転移」がある。一方、逆転移は治療者が患者に対して向ける感情を指す治療関係とは無関係に出現する個人的な感情と、患者の転移に反応して出現するものがある